(2)小人さんの災難(もしくはマサキ――或いはシュウの受難)
「知る訳ねぇだろ、そんな物体」
マサキは今まさに世界が滅亡するのを目の当たりにしたような、絶望的な表情で吐き捨てた。
「ですよねー?」
その凶悪無比な表情たるや、ヴォルクルスに憑依されたシュウに負けず劣らずの迫力で、チカは窓辺にいるのも忘れあとじさってしまい、窓枠から足を滑らせかけた。「あたったったった!」辛うじて翼でバランスを取り、どうにか元の場所に戻りはしたが――さて、何を話したものかと思案するも、言葉は続かない。
――マサキのところに帰る、です!
――えええええええええええええええええっ!?
衝撃的な告白に超級怒涛の勢いで驚愕したチカだったが、考えてみればこれ以上の厄介払いもない。面倒から解放されるとなれば勢い増し、チカは早速、小人を背中に乗せて王都へと羽ばたいた。
羽ばたいたのだが。
道中、思いがけない突風に煽られ、バランスを取るのも難しい気流に流されるまま右に左にスラローム。どうにかこうにか風の流れに乗って飛行体勢を立て直したものの、その時には背中に小人の姿はなく。すわ一大事とチカは辺り一帯の捜索に乗り出したが、大きさが大きさだからか、それとも風に飛ばされてどこぞ遥かに不時着でもしてしまったか、影も形もないどころか、手掛かりになりそうな布切れ一枚さえも発見できぬまま。
普段ならば厄介事からの解放に、そのまま踵を返すところだが、
――あの顔である。
放置していい物体では――ないだろう。
かくて事情だけでも把握しようと、チカはこうしてマサキの元を訪れたのだが、結果はご覧の通り。けんもほろろの扱いに対応しようにも、そもそもの宛てが外れてしまっているものだからどうしようもない。
「どうせあの野郎がまた何か下らないことを思い付いたんだろうよ」
「ですかねえ?」
途方に暮れているチカを見かねたかのような助け舟に、チカは自らの主人のマサキに対する評価を思い出す――マサキは根が善良に出来ている。そうでなければ魔装機の操者などやっていけないのだろうが、だからといって生来の性格だけが理由とは限らないものだ。当人であるシュウにはわからないだろう。シュウの気紛れな行動に迷惑を被っているのは、チカだけではない。どのくらいの範囲に迷惑をかけているのかは定かではないが、恐らく一番に迷惑を被っているのはマサキだろう。だからこそ、マサキはその使い魔たるチカをおざなりにしないのだ。
「その小人ってのは」不機嫌に輪をかけた仏頂面さながら、言葉を継ぐ。「文字通り小さいんだろう? お前の背中に乗れるくらいなんだから」
「そりゃもう小さいですよ。ちんまりとしてて、そのくせ顔はしっかりご主人さまというか、あの顔を幼くしてちんくしゃにした風な按配で」
「冗談にしか聞こえないよなあ」
「冗談だったらどれだけ喜ばしいことでしょう!」
チカは窓辺から飛び立ち、机に肘付くマサキの目の前に陣取り、
「何が怖いって何かわからないのが怖いんですよ! マサキさんは知らないときている! ご主人様の仕業だったら、あれがただの小人である筈がないじゃないですか! もしかしたら明日には2倍になっているかも知れないんですよ!? よしんばですよ、ご主人様の仕業じゃなかったとして、じゃああれは一体どこからきたんです!? ご主人さまと同じ顔のあれは? ほら、考えたらものすごく怖くないですか、この話!」
「あいつの仕業じゃなきゃ万々歳じゃねぇか。余計な苦労がひとつ減る」
「まあそうなんですけどね」机に降り立ち羽を休めながら、
「もしあれが精製物じゃなくて、実際に存在している種族だとしたら、マサキさんどうします? あたくしは困りませんよ。ご主人様は面白がると思いますし。でもマサキさんは困るでしょう? だってあれ、ここに来るのが目的なんですよ?」
言えばマサキは事態を理解したとみえて、比類ない絶望感を露わに、肩を落とした。
「一匹、二匹、三匹、四匹、いやこの単位で正しいのかわかりませんけど、種族単位でここに向かってるとしたら――」言いかけてチカははたと気付いた。「あらやだ! 凄く面白い光景じゃないの!」
「使い魔が死ぬか試してみたかったんだよな、俺」
台詞は軽薄な調子だが、チカの目の前に置かれているマサキの手は微かに震えているように見えた。のみならず、徐々に色を失っているようにも。
――これは本気だ。本気で怒りつつある。
実のところ、チカはシュウの気紛れを面白がっていたりもする。場合によっては盛大に唆したりけしかけたりもしているのだから、マサキが受けている被害の半分ぐらいはチカの所為と言えなくもない。しかしそれは、自分に被害が及ばない範囲での話であって、いくら復活可能な使い魔とはいえ、羽根を毟られたり拳で打ち据えられたりするのは本意ではない。いくら身近にそれを喜ぶマゾヒストが存在していようとも、チカ自身には、その手の趣味はないのだから。
「ご、ごごごご冗談を! あたくし命は惜しいです! あれがご主人様のやっちゃったものだったりしたら、それこそサンドバック! 右も左も恐ろしや! 行きも怖いが帰りも怖い!」
「あの野郎がやったことならそれこそお前を締め上げるぜ」
「どんな八つ当たりッ!? あたくしだって被害者だというのに!」
よく言うぜ――マサキは吐き捨て、チカの額を指で弾いた。
先刻の台詞がどうやら何かを思い出させてしまったらしい。痛みにもんどりかえりながら、あの時か、それともあの時かとチカは振り返るが、思い当たる節が多過ぎて見当が付かず、
「とにかくだな」マサキの言葉に、「はい!」と姿勢を正してみたりする。
「小人なんだろ、それは」
「先程も言いましたが、見事な小人ですよ」
「なら、何もない平原の真っ只中に放り出されたら一巻の終わりじゃねぇか?」
「何気なく酷いことを仰いますね、マサキさん」
それはシュウの非常識に感覚が麻痺してしまったからなのだろう。マサキは、その事実をチカに指摘されて気付いた様子で、「うるせえよ」盛大に顔を顰める。
そしてやおら思い付いたように顔を上げると、
「自然界の掟は弱肉強食。生き残れなきゃそれまでなんだよ」
どちらかといえば、それはチカに言い聞かせているというより、自分を納得させる為に言っているように取れるのだが、
「そういうところ、ご主人様と似てますですよねぇ」
「冗談じゃねぇ」マサキは片手で顔を覆った。そして尽きない溜息を洩らし、「お前、俺に何をどうして欲しいんだよ。そんなちっこい物体を探せって?」
「だって、ですよ。あれがご主人様の気紛れの産物だったら、それを放流してしまったのみならず、こうしてマサキさんに種明かししてしまったあたくしの天命は尽きたも同然! ご主人様は自分の楽しみを奪われることを大層嫌われるんです!」
「楽しみとか言うな」
そっけなく切り返して、それにだな、とマサキは言葉を継ぐ。
「だったら尚更力尽きてくれた方が有難い話じゃねぇか、俺からすれば。普通に考えてみろよ。野生の生物が多いこのラングランで、そんな小さい生物が――しかも人間みたいなもんだろ。人間ってのは知恵がなきゃ一番弱い生物なんだぜ。それが生き残れると思うか? 俺は思わない、けどな」
「願望を過分に含んでません、それ?」
「それもあるけどなあ、常識的に考えてみればそりゃお前」
「ですかねえ?」チカは首を捻る。
「そうじゃねえかよ。生物の基礎だし、自然の摂理ってやつだろうよ」
「ご高説は尤もなんですけどね」チカはマサキの腕を伝い肩に乗り上がった。
言われても納得出来ないものがあの小人にはあるのだ。
「――だってあれ、どう考えても常識の範囲外の生物でしょ」
胸に蟠る不安を口にすると、マサキは一度ならず二度までも世界の滅亡に立ち会ったかのような凶悪さが増した表情になる。
※ ※ ※
さてその頃、話題の主たるシュウはといえば、こちらはこちらで逼迫した状況に直面していた。
「これも駄目……と」
手元のリストに印を付けて、彼にしては奇跡的な困惑の表情――微かに柳眉を顰めただけだが、如何なる苦境も平然と遣り過ごす彼からすれば、それは決して当たり前でない感情の発露だった――で見下ろす先には、ぎゃんぎゃんと小煩く声を上げて泣くマサキの姿があった。
ただのマサキではない。
掌に乗せて尚余る大きさのマサキだ。
しかもそれは一体のみならず、群れをなして、床に描かれた魔方陣の上にひしめき合っている。まるでイナゴの大群よろしくみっしりと、隙間なく身を寄せ合うその数およそ五十匹。シュウは思う。このサイズにこの数ときたら、それを人間扱いするのは、人間である自分に対して失礼だと。
五十匹を魔法陣の上に集めるのも大変に労力を必要としたが、五十匹相手に術を放つのは更なる労力がいったものだ。それが徒労に終わっても、平然としていられるのは、日頃の節制の賜物か。涼やかな表情をしながらも、内心は忸怩たる想いに違いないシュウを襲った厄災は、今日生じたばかりのものだった。
※ ※ ※
異変を感じたのは昼日中だった。遡ること一週間ほど前、チカは怠惰に日々を送る主人に愛想を尽かしてか、それとも何事もない日々に退屈が極まったのか、散歩をすると告げて外に飛び出して行ったきり。独り変わらぬ日常を送っていたシュウに、それは微かに、けれどもリアルな感覚で襲いかかった。
呪術の発動。
広範囲を覆う。
力は一点に集中させた方が威力を増す。それほどに強まった魔力なら語るまでもない。一般人ですら異変に気付くだろう。それはなまじっかな人間では感じ取れないない魔力だった。広範囲に拡散されたからこその弱さで辺り一帯を覆い尽くした司祭クラスでもどうかというその魔力をシュウが感じ取ったのは、より強く、より濃く、魔力という強大な力を遺すが為に効率的な婚姻を繰り返してきた王家の血の成せる業だった。
傑出した才能を持つモニカには及ばないにしても、シュウとて魔力テストに合格した元王族。自らの持つ魔力の才能には自信を持っている。その血が囁くのだ。何かを起こす魔力が襲いかかったと。
でなければ、長い逃亡生活をどうして送れよう?
魔力と練金術と科学という二つの世界を跨ぐ三つの理を手中に収めているシュウは、一極のみに特化した人間よりも膨大な知識と経験を持っている。理論を知る者は、それを解体することもできるのだ。解体した先にあるのは無効化、或いは対抗策の構築。一見、古びたあばら家でしかないこの根城に、どれだけの防護策が仕込まれているのか、見抜ける者はアカデミーにも数人といないだろう。
その防護策を突き抜けて干渉した魔力が気にならない筈がない。
否、明瞭り言えば気に入らない。
手っ取り早く原因を突き止めるためには、アカデミーに繋ぎ、その膨大なデータを参照することだったが、流石に防衛の要たる頭脳集団が幾つも集う場所は堅牢に出来ている。ネットワークを通じて侵入する為のパスの割り出しだけでも三日。繋いだ先に確実で安全なルートを構築するのにまた三日はかかるだろう。広域を覆ったこの魔力がどういった類の呪術を用いたものかは不明だったが、例えそれが原因で逃亡者たる自らの所在が掴まれるようなことになっていたとしても、継続して降ってこない以上は、こちらの所在を追尾するのは不可能だろう。チカは話さえしなければ、ありふれたローシェンの一匹で済む。逃走は自分よりも容易い――そう決め付けて、シュウはチカを残して根城を後にし、情報を掴み易い王都近くのこの場所にやって来たのだが。
「さて、どうしたものでしょうかね」
五十匹のマサキを目の前に、シュウは呟いた。
少し油断すれば服を伝って肩に頭に乗りあがるこの生物が出現したのは、シュウが手狭なこの家に到着して、長く使われていないが故に家具や床に積もった埃を、仮住まいに足りる程度に払い終えた直後だった。
――世の中には、自分以上に奇矯な人間がいるのか。
自分以外に、誰がこうした生物を創ろうと思い立つのだろう。魔装機神に関わるごく一部の考えかねない女性陣ですら、もっと自制心があるだろう――。最初の一匹を目にしたときのシュウの感想は、己の奇矯さを自覚しているに他ならないものだった。その事実を、さして離れていない場所で、今まさに喧喧囂囂と遣り取りを繰り返しているチカとマサキが知ったなら、目を剥いて驚いたに違いない。
けれどもそれはシュウの預かり知らぬ事態。
とにかく、一匹が二匹になり、二匹が三匹になり、三匹が四匹と、家のあちらこちらから湧いて出て、今や五十匹となったマサキに囲まれているシュウには、他の場所で事象の異なる変事が発生しているなどとは考えも及ばない。
「おなかすいた」
一匹のマサキが靴の先まで近付いてくるなり、遥か彼方のシュウの顔を見上げて言う。
「おなかすいた」「おなかすいた」「おなかすいた」
それを契機に、残りのマサキも一斉に声を上げる。
打てる手は殆ど打った。事態の収拾を図るべく、考えられる全ての原因をリストアップした手元の紙はその大半に斜線が引かれている。どれもこれも、対応策を試した結果だ。
「おなかすいた」「おなかすいた」「おなかすいた」
一度の食事が僅かな木の実程度の量で賄えるのは幸いなのか。どこに行こうとも後をついて回るマサキの大群に視線を戻して……シュウは紙束で口元を覆うと、
短く溜息を、ひとつ。
※ ※ ※
「つーことでだな、先のことはその小人とやらがここに辿り着いてから考えようぜ。生死どころか存在も危うい物体を、姿を現すより先に心配しても仕方がねぇ。そもそも小人云々よりあの野郎が行方不明な方が遥かに問題じゃねぇか」
延々マサキと堂々めぐりの議論を重ねていたチカは、くたびれ果てて机の上に伏せていた。
その議論の最中、マサキはチカの話からシュウの不在に思い至ったらしい。訊ねてそれが真実だと知るや否や途端に顔色を変え、「馬鹿かお前は!」半ば詰るように言い放った。
その身を案じているのか、それとも新たな騒動の種になるやも知れぬと危機感を募らせたのか――どちらの意味でシュウの動向を気にしているのか、チカにはわからない。些細な嫌がらせで済むなら、世は平穏無事に過ぎる。だが、マサキに魔装機操者としての目的と使命があるように、シュウにはシュウの目的と使命がある。その為に、結果としてラングラン全土に様々な災厄を招くことになったのだと、そしてそれは遠くない過去であったのだと、マサキは身を持って知っている。シュウと長く共に行動してきたチカより詳しくはなかろうが、それを抜きにすれば誰よりも知っているだろうに。
けれども、もしかすると――うっすらと青褪めている面差しは、その感情を量らせてはくれなかったけれども、チカは主人の身を案じているからこその心配はないかと思う。
「そうなんですけどね、あたくしご主人様の使い魔ですから生死ぐらいはわかっちゃうわけで」
思うからこそ口にする。自らの主人がどちらに転ぼうが、実のところチカからすれば思いっきりどうでもいい話であったりするのだが、使い魔とて心ある生き物。稀には情に絆されてしまうこともある。自分の主人を損得関係なしに気遣ってくれるのはマサキしかいない。情で縛られている女たちと比べれば、それはどれだけの”良心”に映るだろう。下心が垣間見える情けや思い遣りであるなら、シュウの側に居続けるチカは幾らでも見てきた。サフィーネしかり、モニカしかり……或いは、テリウスもそうであっただろう。
シュウが仲間といえども容易に自らの本心を明かさないのは、彼もまたその事実に気付いているからなのだ。
「生きているんですから、大丈夫だと思うんですけどねえ」
しかしマサキからすればどうでもいい話では済まされないに違いない。気休めになればとチカが言えば、間髪入れずに、「生きてりゃいいってもんじゃねぇだろうよ」と言葉が返る。
「どこかで拿捕されたりすれば、こっちに連絡のひとつもくるだろうけれどな、ないってことはそれ以外の理由ってことだろうし、それが気紛れな放浪で片付きゃいいけど、片付かないかも知れないのがあいつだろ」
個人的な因縁だろうと周囲を巻き込むのがシュウなのだと、短くない付き合いだけあって、マサキはよくわかっている。だが、それはマサキの立場上の問題であって、シュウの使い魔たるチカからすれば守備範囲外。何があろうとチカはただ、シュウに付き従っていくだけだ。
「その時こそマサキさんの出番ですよねー?」
なれば口調も軽くなる。
それに対して、マサキは盛大に”面白くなさそうな”顔をした。
「そんな事態はもう沢山なんだよ。だからこうして言ってるんじゃねぇか」
「あれあれ? 殊勝な口をおききで。随分丸くなられましたよねえ、ホントに」
「戦わずに済むならそれに越したことはねぇからな」
「本当ですか?」歪んだ眉の下で細められた瞳を覗きこむ。何を考えているのかはわかならなかったが、「何だかんだ言ってもあれやこれやされた人は気になるものですよねえ。マサキさんも類に洩れ」からかってみせれば、降ってくる拳。
それを間一髪で避け、チカは宙を舞ってみせた。
使い魔とはいえ鳥は鳥。いかに魔装機操者として鍛え抜かれた身体能力を持っていようとも、野生の反応速度に敵うわけがない。余裕綽々でふわりとその鼻先に舞い降りチカが目だけで笑ってみせると、マサキはどうしようもなく破滅的な表情になった。
「最近、俺一人で被害が済むならそれでいんじゃねぇかって思い始めてるんだ」
「うわあ、それってすっごい捨て鉢思考!」
「やっぱりそう思うか」言った端から頭を抱えるマサキは続けて、
「だからこそ水際で食い止めたいんだけどなあ」
その深刻さが滑稽でもある。
だからこそチカは今更に気付いた”ある事実”を口にしてよいものか迷った。マサキは思い詰めれば何をしでかすかわからない。このまま放置しておけば魔装機を駆り出して、シュウの探索ぐらいはするだろう。それはそれで面白い。面白いのだが、更に事態を悪化させない保障がない。
何せ原因が小人である。自らの主人の顔をした。
しかも目的はここ、ゼオルートの館にいるマサキに会いに来ることなのだ。
発見されていい物体ではない――自分の楽しみと苦境の狭間に立たされたチカは暫し考え込んだ結果、「それは困る」という安直な結論に至った。もしあの小人がここに辿り着いてしまったとして、その際にマサキが長期の不在にあたっとしたら、一体、誰がその世話をすることになるというのか。何だと言いつつも、マサキはシュウの気紛れという名の悪ふざけを許容してくれている。被害が周囲に及ぼうとも、その因果関係を胸ひとつに納めておいてくれる程には。
これがもし、他の魔装機の操者――分けてもサフィーネですら閉口させるあの|堅物堅牢意思強固な中華体育教師辺りに知れた日には、ただでは済むまい。可愛さだけなら、本人より遥かに優っているとはいえ、悪ふざけの本人を探し出しては、ひと説教、ふた説教と、何日にも渡っての地獄を繰り広げるのだろう。
厄介さの度合いは浅ければ浅い程、それも悪ふざけの範疇なら尚更、いいに決まっている。「あのー……」チカは、思い切ってその事実を口にすることに決めた。
「今の今まで小人に気を取られてて気付かなかったんですがね、マサキさん」
それは果たしでどちらの理由であったのだろう。主人が自らの魔力を放出した理由は。
ただ単純な気紛れでなされたものなら、マサキにとっても吉報なのだが。
「ご主人様、恐らくこの周辺にいますですよ」