続々・140字SSにチャレンジした記録 - 6/9

 これは何です。と、マサキからのプレゼントを受け取ったシュウが怪訝そうに声を上げる。何って、プレゼント以外の何があるかよ。マサキが云えば、あなたからプレゼントを受け取るようなことをした覚えは――と、今にもプレゼントを突き返しかねない勢いで言葉を継ぐ。
「お前、一か月前のことももう忘れたのかよ。お前がくれたあの本、10万クレジットにもなったんだぜ。そりゃ俺だって何かの形でお前に返さなきゃって思うだろ……」
「ああ、あの本ですか。律儀なことですね。駄賃だと云ったのに」
 中身は後ほど検めるつもりでいるようだ。ラッピングも色鮮やかなプレゼントを、そうっとグランゾンの操縦席に収めようとしたシュウに、見ろよ。マサキは云った。
「俺にしちゃ上出来なプレゼントだと思うぜ」
 その言葉に興味を誘われたようだ。シュウはラッピングバッグの口を絞っているリボンを解いた。そして中から一冊の分厚い書籍を取り出した。革表紙に金箔で題字が彫り込まれた私家版の研究書。例の古書店の店主にシュウが持っていなさそうな本をとリクエストをして取り寄せてもらった稀覯本は、果たしてシュウの知的好奇心をそそったのだろうか。
「……有難く頂いておきますよ」
 眉ひとつ動かぬ無表情に、もしや、もう持ってたりしたか? マサキが尋ねれば、彼の肩にとまっていた彼の使い魔が「違いますよ、マサキさん」と、呆れた様子で言葉を放った。
「ご主人様は照れるとこうなるんです」
「照れてる?」
「それだけマサキさんからのプレゼントが嬉しかったってことですよ。みなまで云わせないでくださいな」
 チカ、とシュウがチカに冷ややかな視線を向けるも、舌好調な彼のおしゃべりは止みはしない。ああ、お熱いことで。新婚旅行は熱海ですか! などと、下卑た笑顔を浮かべながら続けてくれたものだ。
 そんなチカを無視して、恐らくは図星だったのだ。シュウは挨拶もそこそこにグランゾンを起動して、マサキの視界から消えていった。

140字SSお題ったー2
kyoさんは【照れ隠し】をお題にして、140字以内でSSを書いてください。