そこにマサキがいる瞬間にふと思ってしまうことがある。このままこの時間に留まり続けていられたらどれだけ幸福だろうかと。けれどもそれは叶ってはならない望みなのだ。彼には帰るべき場所があり、そこにこそ輝ける人生がある。そう、シュウの見たいマサキ=アンドーという人間の未来は、シュウには与えられないものなのだ。それを妬ましいこととは感じない。ただ、自分も彼の日常の一部であれれば……とは考えてしまうことがある。烏滸がましい。シュウは嗤った。光と闇、表と裏、未来と過去。マサキとシュウがそれぞれ持つ属性は、まるでギリシア神話の時の神のように、決して互いを向き合わないものばかりだ。それがひととき、道を交えた。それだけで充分ではないか。ささやかな幸運。けれども大きな恵み。だのに欲深い人間たるシュウは、微かに胸を疼かせる欲望を、今日もまた捨てきれずにいる。
140字SSお題ったー
kyoさんは【閉じ込めていたい】をお題にして、140字以内でSSを書いてください。