続・140字SSにチャレンジした記録 - 9/10

 それは旅先から届いたと思しき一枚の手紙だった。
 簡単な近況を告げる便箋と名所が収められた写真が何枚か同封されているだけの。
 その写真の何処にも差出人たる彼の姿がないのが、旅行だからといって浮かれるでもないその性格を表しているようだ。何であいつはアナクロな手段が好きかねえ。暫くそれらを眺めた後に、呟きながらマサキは写真の表面へと指を這わせていった。
 一枚、また一枚。次から次へとそうして写真の“処理”を続けていると、やがて指先が違和感を探り当てた。ここか、とペーパーナイフで切れ目を入れたマサキは、層になっている写真の紙を慎重に捲り上げた。そこには小指の先ほどの大きさのマイクロチップが一枚、さも当然のように挟み込まれている。
 久しぶりの休暇も今日で終わりなようだ。
 再びマイクロチップを写真に戻したマサキは、その写真を無くさないようにフィルムパックに入れ込んだ。そうして壁に掛かっているジャケットの内ポケットに収めた。中にどういった情報が記されているのか、今の段階ではわかりようがなかったものの、これだけ回りくどい手を使ってみせたのだ。決して穏便に済むような内容ではないだろう。
 ――ほら、お前ら。出番だぞ。
 床に寝そべっている二匹の使い魔を叩き起こし、一日ぶりにベッドから出る。カーテンを閉め切って生活していたからか。着替えを終えて外に足を踏み出せば、外の光が額を暴力的に叩いてきたものだ。ああ、くそ。面倒臭え。マサキはサイバスターに乗り込んだ。そしてマイクロチップの中身の分析を頼むべく、情報局のセニアの許へとはしり出して行った。

140字SSお題ったー2
kyoさんは【手紙】をお題にして、140字以内でSSを書いてください。