かき氷だ。と声を上げてソファから飛び起きたマサキに驚いたようだ。床に伸びていた二匹の使い魔が、びくりと身体を揺らす。
「ニャんだニャんだ」
「ニャによ、いきニャり」
天井の桟にて身体を休めていたチカは、そんなマサキの奇行にも慣れたようだ。彼はふわりと翼を広げて降りてくると、マサキの声に何ら反応を示さず読書を続けるシュウの肩にとまって、「――だ、そうですよ。ご主人様?」
「何の話です、チカ」
「ちゃんと聞いていましたか? マサキさんがかき氷を食べたいんだそうですよ」
「フラッペなら街に出れば食べられますが――」
膝に広げた書物から顔を上げたシュウが、窓の外に視線を投げた。陽射しのきつい午後。目を開けているのも辛くなるほどに眩い光が世界を覆っている。
「この強い陽射しの中、街に出るのは流石に」
「かき氷機ぐらい持っとけよ」マサキはシュウにしなだれかかった。
空調が効いているとはいえ、強い陽射しが差し込む室内。冷やした先から温くなる空気に、それだったら内臓から冷やせばいいと口に出した言葉だった。なあ、シュウ。食べたい。再び書物に視線を落としたシュウの肩を揺らす。
「アイスクリームでは駄目なのですか。そのぐらいでしたら冷凍庫に幾つか」
「かき氷がいい」
「アイスクラッシャーならありますが、そこからフラッペを作るとなると根気が要りますね」
マサキを退けて立ち上がったシュウが、リビングと続きになっているキッチンに向かう。マサキはシュウの後を追った。どうやら冷蔵庫の中身を確認するつもりなようだ。野菜室を開いたシュウの背後から顔を覗かせると、葉物野菜に混じって苺とオレンジが収められているのが見える。
「アイスもあるって云ってたよな」
「あなたが食べたいと云い出すと思っていましたので」
「だったらシロップかジュースが欲しいな」
「砂糖で充分でしょう」
早速と冷凍庫からロックアイスを取り出したシュウが、スプーンを片手に、先ずは適度な大きさへとロックアイスを砕いてゆく。マサキも見様見真似で氷を砕きにかかった。スプーンの裏側で氷を叩く。三度も叩かずに割れる氷。面白いなと口にすれば、クラッシュアイスはこうやって作るのですよ。との返事。
そうして手頃な大きさになったロックアイスを、アイスクラッシャーへと放り込んでゆく。
更に細かく砕かれてゆく氷。かき氷と呼ぶには粒が大きいものの、食べ易い大きさになったのは間違いない。マサキはシュウに渡された氷を冷凍庫に仕舞い込んだ。そしてオレンジを絞っているシュウの隣で苺のへたを取りにかかった。
「俺が想像していたより、贅沢なかき氷が出来上がりそうだ」
「必要なら生クリームもありますよ」
絞ったオレンジに、へたを取って小さくカットした苺。それをミキサーに放り込み、砂糖を加えて混ぜ合わせる。流石に生クリームは遠慮する。マサキは冷凍庫から取り出した氷を器に盛った。その上にアイスクリームを乗せ、ミキサーした果汁を垂らしてゆく。
大量のロックアイスを贅沢に使ったかき氷。その場でひと口食べてみれば、思った以上に瑞々しい味わいだ。
口の中でそれぞれの素材がバランス良く溶け合う。美味い。きっと相当に満足気な表情をしていたのだろう。声を上げたマサキに、それは何より。と、シュウも満足気に微笑む。
「満足しましたか、マサキ」
「勿論だよ」マサキは笑って、続きを味わうべくリビングへと戻って行った。