またかよ、と、ソファに腰掛けるなり、膝の上に頭を乗せるようにして腰にしがみ付いてきたシュウに、マサキは溜息混じりで言葉を吐いた。サイバスターに通信が入った時点で予想はしていたとはいえ、毎度々々計ったように戦闘中に連絡を寄越す男に、もしかしたらこの男はわざとやっているのかも知れないのではないか。そんな思いが頭を過ぎる。今度は何だって。マサキは云いながらシュウの髪を撫でた。
「今日は随分と諦めが早いですね、マサキ」
「話を早く済ませたいんだよ。セニアへの報告を後回しにして来てやったんだ。くだらない用事だったらぶっ飛ばすぞ、お前」
柔い髪。絡まり易い猫っ毛に指を通しながら、未だ膝に頭を埋めているシュウにマサキが聞けば、シュウはそっとマサキの顔を盗み見るように頬を開いてくる。切れ長の眦に瞳が寄る。その口元の様子は窺えないものの、目の表情から察するに、どうやらシュウは笑っているらしかった。
「今日はハグの日なのだそうですよ」
「ちょっとそこに立てよ。その面に一発お見舞いしねえと気が済まねえ」
ついに八つ当たりですらなくなった急な呼び出しの理由を聞いたマサキは、シュウから手を離すと両手を閉じて指を鳴らした。御冗談を。そう云ったシュウが、マサキの膝から頭を起こす。そのまま上半身まで身体を起こしたシュウは、マサキの肩に顔を埋めてくると、
「ねえ、マサキ。偶にはあなたが私を抱き締めてくれてもいいでしょう」
「それだけの理由で俺を呼び出しやがったのかよ」
「それだけ、とは心外ですね。あなたを呼び出すに足る充分な理由でしょう」
「山賊風情が相手だったからいいものを、これがテロリストとの戦闘中だったら、本当に殴ってるぞ。せめて戦闘が終わるのを待てよ。余裕のない時にばかり連絡してきやがって……」
「そこは私もきちんと調べていますからね。これでも、切羽詰まった状況のあなたを邪魔しない程度には、理性を働かせているのですよ」
長い溜息を吐き出しながら、それでも何もせずにこの場を去ろうものなら、どんな仕返しがマサキを襲ったものか。
いつだったか呼び出しを無視した時のことが、マサキの脳裏に思い返される。どんな方法を用いたものか。一瞬にして操縦不能に陥ったサイバスターは、一路シュウの許へとマサキを送り届けてみせた。だったら降りなければいいだけと、マサキはコントロールルームに籠城を決め込んだのだが、この常識が通用しない男の前ではその程度の抵抗など無駄以外の何者でもなく。あの時は酷い目に合った。マサキが呟くと、シュウにはいつのことだか即座に思い出せたようだ。
「わかっているようで何よりですよ、マサキ」
マサキの肩に顔を伏せたまま笑っているシュウの身体に、マサキは腕を回した。大型犬も裸足で逃げ出すような甘えっぷり。それをうっとおしく感じつつも、毛嫌いするまでには至らない。むしろ心の片隅で喜んでさえいる自分さえいるのだから、マサキは自分のことながら大概だと思う。
とはいえ――。
落ち着かねえ。マサキは少しもしない内に、そう吐き出していた。背中を丸めてマサキに抱き締められているシュウの姿勢の不自然さも手伝って、どうしようもないほどの違和感を覚えてしまう。
「奇遇ですね、マサキ。私もそう思っていたところですよ」
シュウはマサキから身体を離すと、マサキが身を任せてくるだろうと確信しているような様子で両腕を開いてくる。まあ、いいけどよ。マサキはシュウの胸に凭れた。硝子細工を扱うようにそうっと。いつも通りにマサキを柔らかく抱き締めてくるシュウの腕に、そうしてマサキは身を任せていった。